好きになった女性は既婚者

ひとみがカフェで出会ったその人は、洒落たスーツに帽子を被ったおじいさんでした。
彼女の視線に気づいてそのお客さんが顔を向けると、丸い眼鏡に白いヒゲが見えました。
そのときにひとみは思い出しました。

その人は彼女が高校生のときにお世話になった恩師だったのです。
ひとみの家は昔から転校が多い家庭だったので、小学校や中学校もいくつか経験していました。
高校になってからも1度転校を経験し、安定しない環境で過ごす学校生活を不安に感じていました。

そんなときにあの先生に出会ったのでした。
そして彼に出会ってから、彼女は自分の境遇を自分しか経験できない特別なものだと考えられるようになりました。
そしてさらにたくさんのことを彼に学んだのです。

高校を卒業してからは先生には一度も会っていなかったので、もう20年近くたっているでしょうか。
あまりにも久しぶりの再会に、少し戸惑いもありましたが彼の方もひとみを覚えていたらしく、話かけてきてくれました。

そのときに彼女は、彼から大事なことを教わりました。
これからの人生では自分の道を決めてから進みなさい、ということを彼は言いました。
今まで特に目標を掲げたり自分の意志を押し通したりしてこなかったひとみは、この言葉をとても新鮮に受け止めることができました。

そしてそれが彼女の考え方を一気に変えていったのです。
自分の道、彼女はそんなことを考えたことは一度もありませんでした。
この日の出来事がこれからのひとみに影響を与えたのです。